杉並区長選が6月21日告示、28日投票で行われます。「東京の図書館をもっとよくする会」は立候補予定者に「杉並区の図書館についての公開質問」を行いました。新聞・インターネットで報じられている5人のうち、連絡先の分かる3人に依頼状、公開質問を送りました。
公開質問を送った立候補予定者は、田中良(前区長)、大和田伸(自民党前区議)、岸本さとこ(現職)の3氏です。先に回答のあった田中良氏に加えて、大和田伸、岸本さとこの2氏からも回答がありましたので、併せて掲載します。掲載は到着順です。
*「杉並区の図書館についての公開質問」の質問項目は本稿末尾に掲載します。
回答
【1 田中良 】
1、指定管理者制度等の図書館の民間委託について
私は、指定管理者制度は、民間事業者の経営のノウハウを活用し、多様化する区民ニーズに対応し、施設利用者に対するサービスの向上を図るとともに管理経費の縮減に寄与する制度として杉並区ではすでに定着した制度となっていると認識しています。またその効果も区が実施した利用者満足度調査がすべての館で95%以上の高い満足度が得られていること、また区が実施した指定管理者制度の検証資料でもこれら指定管理者に従事する職員の現状への満足度が7割以上と高いことから指定管理者等の見直しは必要ないと考えます。
2、非正規労働者(民間委託下に働く職員及び会計年度任用職員)の待遇改善について
私は、同じ企業内で職務内容・責任・配置などの範囲が同じであれば、正規・非正規といった雇用形態にかかわらず、基本給等の待遇について不合理な格差をつけてはならないという考え方は大切だと考えています。杉並区でも国の法制度とガイドラインに基づき、この原則を踏まえた対応が必要だと考えています。ちなみに私は区長在任時に区の公契約条例制定の取り組みを進め、令和2年第1回区議会で杉並区公契約条例を制定しました。
3、図書館の削減について
図書館数の削減については、反対。図書館は、地域にとってなくてはならない施設です。削減の考えはありません。
4、司書職の採用について
私はかねてより図書館の司書や博物館等の学芸員は、行政にとっても不可欠な専門職だと考えています。その意味で区行政の中で必要な正規の専門職の配置は行うべきだと思います。
5、学校司書の配属について
私が区長に就任後、2012年に区立の全小・中学校に学校司書を配置しました。当時は非常勤職員でしたが現在では会計年度任用職員として処遇していると思います。同時にこうした学校司書を調整するために司書の資格を有する正規の職員を整備教育センターに学校司書担当係長を配置しています。
また学校司書の財政調整交付金については、小・中学校費の学校職員費として算定充実すべき課題としてあると認識しています。
6、資料費の増額について
図書資料の費用は充実していくことが必要だと考えています。特に時代の変化に対応した電子書籍化への対応も必要だと思います。
【2 大和田伸 】
1、指定管理者制度等の図書館の民間委託について
杉並区が令和 5 年 9 月に発行した『指定管理者制度の検証報告書』の付属資料によれば、指定管理者制度を導入している図書館への利用者調査において、「満足」と回答した方が 95.9%となっており、満足度は高いと考えます。
また、正社員以外の従事者の働き方の希望では、「現在の就業形態を続けたい」が 74.4%となっています。
以上のことからも、指定管理者制度を続けることには賛成です。
2、非正規労働者(民間委託下に働く職員及び会計年度任用職員)の待遇改善について
働く人が求めるもの・重視するものにより、希望する就業形態は異なると考えます。
職責に見合った待遇改善は必要と考えますが、非正規労働者に特化して考えるものではなく、正規労働者も含めたバランスの中で検討すべきものと考えます。
3、図書館の削減について
図書館数を削減することには反対です。むしろ、高円寺地域には 1 館しかないため(他の 6 地域は各 2 館)、もう 1 館新設すべきと考えます。
その上で、学校図書館との連携強化等、区民の利便性を高める取組を行うべきと考えます。
4、司書職の採用について
司書や学芸員等、専門職を自治体が正規職員採用するかどうかは、採用環境を検討するうえでひとつの課題だとの認識はあります。
任期付職員制度の活用等も含め、検討を深めていく必要があると考えています。
5、学校司書の配属について
学校司書の配置の必要性については、同じ考えをもっておりますが、「正規職員」の場合は、上記 4 と同様に考えております。
ご指摘のように、財政調整交付金で措置されれば、状況は変わってくると思います。
6、資料費の増額について
読書は「考える力」や「感じる力」の土台を広く支える活動であり、重要なものと考えております。したがって、読書環境の充実は必要と考えます。
全体予算とのバランスは考慮しなければなりませんが、資料費の増額自体は肯定的に考えております。
【3 岸本さとこ 】
1、指定管理者制度等の図書館の民間委託について
私は、図書館は民主主義社会を支える重要な公共インフラであり、その役割は今後さらに高まると考えています。
図書館は本を貸し出す施設にとどまらず、誰もが無料で知識や情報にアクセスし、生涯にわたって学び続けることを支える公共財です。また、人々の居場所であり、支援につながる入口であり、情報リテラシーを育む拠点でもあります。
そのため、図書館運営に必要な知識や経験、専門性が自治体内部に蓄積されなくなることには課題があると考えています。長期的には、司書を含む専門人材の採用・育成・登用を計画的に進め、公共サービスとしての図書館の質を高めていくことが重要だと考えています。
2、非正規労働者(民間委託下に働く職員及び会計年度任用職員)の待遇改善について
図書館サービスの質は、そこで働く人材によって支えられています。専門性や経験に見合った処遇を確保することは重要な課題です。
杉並区では、指定管理施設で働く図書館司書の処遇改善を進めるため、公契約条例における職種区分を見直し、司書の専門性を適切に評価する方向で改善を行ってきました。
また、会計年度任用職員についても、勤勉手当の支給や再度任用回数上限の撤廃など待遇改善を進めています。
今後も、司書をはじめとする専門職が誇りを持って働き続けられる環境づくりに取り組んでいきます。
3、図書館の削減について
図書館は地域における学びと文化、交流の拠点です。
子どもから高齢者まで、誰もが利用できる身近な公共空間として重要な役割を担っています。私は、区民が利用しやすい図書館サービスの維持・充実を図るべきだと考えています。
4、司書職の採用について
私は、司書を単なる蔵書管理の担い手ではなく、情報リテラシーを支える専門職として位置づけるべきだと考えています。
情報過多や偽・誤情報が広がる時代において、必要な情報を探し、その信頼性を見極め、自ら学び判断する力を支える司書の役割はますます重要になっています。
若者や女性、マイノリティに対するSNS上の誹謗中傷や情報操作が社会課題となる中で、子どもから大人まで一貫して情報リテラシーを育む仕組みが必要です。その中核を担う専門職として、学校司書と図書館司書の役割を改めて位置づけたいと考えています。
今後、学校図書館と公立図書館の双方で経験を積みながら専門性を高められる人材育成のあり方や、その専門性にふさわしい配置・処遇について中長期的な検討を進めます。
5、学校司書の配属について
杉並区は長年にわたり、全国でも先進的に学校司書の配置を進めてきました。現在、すべての区立小中学校及び特別支援学校に学校司書を配置しており、子どもたちの読書活動だけでなく、探究学習や情報活用能力の育成を支えています。
私は、学校司書の専門性はこれからの教育においてさらに重要になると考えています。教育委員会とも連携しながら、学校図書館と公立図書館をつなぐ人材育成や、専門性にふさわしい配置・処遇のあり方について検討を進めていきます。
6、資料費の増額について
物価上昇が続く中でも、図書館は誰もが知識や情報にアクセスできる機会を保障する重要な役割を担っています。
区民の多様な学習ニーズや情報ニーズに応えられる蔵書構成の充実は重要であり、資料費についても図書館サービス全体の充実という観点から適切な確保に努めていきます。
【図書館政策について】
私は、図書館を「本を借りる場所」から、「知る権利、学ぶ権利、そして民主主義を支える公共空間」へと発展させていきたいと考えています。
図書館は、人々の居場所であり、必要な支援につながる入口であり、誰もが無料で知識や情報にアクセスできる公共財です。
SNSや生成AIの普及により、情報を見極める力がこれまで以上に重要になっています。私は学校司書と図書館司書を、情報リテラシーを支える専門職として改めて位置づけ、その専門性の向上と処遇改善を進めていきます。
図書館が、子どもから大人まで、生涯にわたって学び続けることを支える拠点となるよう取り組んでいきます。
★「杉並区の図書館についての公開質問」質問項目
(図書館政策をお持ちでしたら送ってください)
1 指定管理者制度等の図書館の民間委託について
図書館の指定管理者制度等民間委託はコスト削減を目的としたため、官製ワーキングプアを大量に生み出しました。民間委託を続けることについてどのようにお考えでしょうか。
2 非正規労働者(民間委託下に働く職員及び会計年度任用職員)の待遇改善について
非正規労 働者の待遇改善の運動が広がり、自治体雇用の会計年度任用職員についても、多くの自治体で若干の待遇改善が図られました。同一労働同一賃金の原則に基づく抜本的改善が必要と考えます。どのようにお考えでしょうか。
3 図書館の削減について
図書館は、区民がだれでも自由に利用できる居場所であり、貧富にかかわらす学習し文化を享受できる場所です。身近にあってこそ役に立ちます。図書館数を削減することについてどのようにお考えでしょうか。
4 司書職の採用について
要求に応じて資料や情報が提供されることは民主主義社会を維持する基本です。資料や情報をいち早く正確に提供するためには、専門職で正規の司書の育成が不可欠です。司書職の採用についてどのようにお考えでしょうか。
5 学校司書の配置について
私たちは、学校教育を豊かにするために学校図書館法に基づく正規の学校司書の配置が必要だと考えます。また、そのための財源は特別区財政調整交付金で措置することが必要と考えます。これらについてどのようにお考えでしょうか。
6 資料費の増額について
1000円以上の本には手が出せない家庭が少なくありません。区民の学習要求に応えるために資料費の増額が必要です。どのようにお考えでしょうか。