【連載】鈴木由美子の図書館エッセイ①

―本と読書、民主主義、ジェンダーのことなど気ままに書いていきます―

 

1.小学校図書室で読み始めた本を、60数年後に読み終えた話

コロナ禍によって、小さいとき途中まで読んだ物語と60年余りを経てめぐり会い、ようやく通読できた話を書きます。

当時私は8歳で小学3年生、図書の時間は、学校図書室で本を読むことになっていました。読み終えた瞬間にチャイムが鳴ればいいけれど、次の本を読み始めた最悪のタイミングで、キンコンカンコンの音が聞こえてきます。

時間が終われば本を棚に返して図書室を出され、翌週に他の子がその本を読んでいれば、続きを読むことは不可能です。新設校だから本は少なく、クラスの人数は55人以上が普通という時代でした。この図書室で本を借りた記憶もあるのですが、その年の担任は、貸出しをしない主義でした。

これではブツ切れになった物語が増えていくばかり。先がどうなるかわからないままにされた物語の一つは、「目の見えない少女が、玩具職人の父と暮らしている」話でした。

「作者は外国の人で‘デ’で始まる名前である」「題名には‘こおろぎ’とある」ことは記憶に残っていました。「二人の小さな家は、お金持ちのお屋敷の外壁にくっついた‘おでき’のように見えました」という表現も。人間が住む家を、おできに例えるのは、大げさじゃないかと思ったために、この本を忘れなかったのかもしれません。

その後、世界文学全集のディケンズの年譜で、タイトルは「炉端のこおろぎ」とわかったものの、特に探すでもなく歳月は流れていきました。

その一方、ディケンズの他の作品とは、縁の深い日々を過ごしてきました。『クリスマスキャロル』と『二都物語』は、中学時代に一部暗記するほど読みこんだものです。『デイビッド・コッパフィールド』『オリバー・ツイスト』は、のちに映画化作品も観ました。

さてコロナ感染が拡大してきた頃、私は自宅から離れた町に滞在していました。その自治体は、感染防止のため住民以外には公共施設を利用させない方針を打ち出したのです。私はアマゾンで検索しては新旧の本を買い続けました。ずっと旅行に行かなかったので、ポケットマネーが余っている気分でした。

そして偶然見つけたのが『炉辺のこほろぎ』(ディケンズ作 本多顕彰訳 岩波文庫)です。+

奥付に1935年第1刷発行、2018年第14刷発行とある。83年間もコンスタントに増刷し続けたわけはなく、最近復刻された版なのでした。

頁を開くと、旧漢字・旧仮名遣いですが、これは大丈夫。「寝臺」「鹽鮭」「鐵瓶」「變色」などをスラスラ読めるのは、大正生まれの親を持つ昭和の子どもの強みです。

困ったのは、文字が小さくて活版印刷だったことです。活字を1本ずつ組んで頁を作るため、濃い字と薄い字が混じり、時には字画の一部が欠けている。読みづらいので、読書用の拡大鏡を買いました。小型のカマボコのような透明の棒を置くと、Ⅰ行だけが大きく浮かび上がる。これは便利だと思いましたが、カマボコを次の行に移す動作が、読む速さに追いつかず、2頁でギブアップです。慣れれば裸眼で普通に読めるようになり、通読できました。

父と娘が住む小さな家を形容する言葉は、おできではなく、吹出物と訳されていました。吹出物のほうが、格調は高いかもしれません。

この物語には他の登場人物も多く、妻の不倫疑惑で苦しむ夫や、恋人は外国で死んだと思っている女性などがドラマを引き起こし、最後は『クリスマスキャロル』と同じく全員のハッピーエンドとなります。

はてさて、この物語を小学生向きに仕立てるには、どこを抜き出せばいいのか。玩具職人親子の話で始まっていたから、こういう風にストーリーを進めて、この部分で締めくくれば、起承転結をつけることができる。私の推測は多分当たっているはずですが、確かめようがありません。図書の時間が終了したチャイムと共に、あの本は消えました。

読みかけた本は、最後まで読みたかった。ランドセルに入れて持ち帰りたかった。小学校時代の思い出には、本を奪われるつらさがつきまとっています。

それから20数年を経て、今度は娘が学校図書室デビューをします。日本は豊かになり、バブル前夜まで来ていました。しかし娘が経験した図書の時間は、ホラー映画のような世界だったのです。その話は次回にお届けします。

 

町田市の資料費の削減に反対し、資料費の予算を増額させましょう!

資料費の減額は図書館の生命線に関わる問題です。電子書籍やデータベースなど、図書館資料の範囲は、住民の皆さんの求めに応じて拡大しています。書籍の高騰や書店の減少などにより、図書館の蔵書への期待は高まるばかりです。読書バリアフリーも予算の裏付けがなければ進みません。みなさん、東京の図書館の資料費を大幅に下まわる、町田市の資料費の増額を要求する署名に賛同し、資料費増額を実現させましょう。


【転載】町田市立図書館の資料費増額を求める請願を9月議会に提出しますー署名活動にご協力を!

ここ数年、町田市の図書館政策は大きな曲がり角に差し掛かっています。鶴川駅前図書館の指定管理者制度化や鶴川図書館・さるびあ図書館の「集約」という名の廃止提案、移動図書館車の見直しなど、これまでの図書館サービスを大幅に後退させかねない計画が着々と進められています。

特に、図書館にとって生命線である資料購入費の削減には目に余るものがあります。別紙の請願要旨にあるとおり、今年度の町田市の市民 1 人当たり資料購入費は、東京 23 区と多摩 26 市を合わせた全 49 自治体の中で最下位となっています。

そこで、皆様のご賛同を得て本年 9 月定例市議会に「町田市立図書館の資料購入費の増額を求める請願」を提出したいと思います。

つきましては、お一人でも多くの方に賛同いただきたく、署名簿と賛同のお願い文PDFを以下に載せます。
なお、よびかけ団体としてもご協力いただける場合は、ご了解をいただい た上で署名簿裏面に逐次追加させていただきます。ご検討の上、お願い文の宛先(薗田碩哉)にご連絡ください。

2023年6月19日 町田の図書館活動をすすめる会 代表 手嶋孝典

(以上、町田の図書館活動をすすめる会ニュースより転載。署名用紙賛同のお願い文につきましては、下記リンクから入手してください。)

https://machida-library.jimdofree.com/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/#shomei

多摩市立中央図書館見学会のお知らせ

多摩市立中央図書館 https://www.library.tama.tokyo.jp/contents?1&pid=329

本年7月1日開館、多摩地域でもっとも新しい中央図書館の見学会

【実施日時】 9月27日(水)

【プログラム】

 館内見学:各自

 レクチャー:午後3時~4時30分 2階 活動室

 報告① 横倉館長:中央図書館の空間構成は1階は書庫、2階は広場をイメージしている。
     施設の概要と多摩市立図書館の今後の運営について、説明と質疑応答

 報告② 「中央図書館をつくる会」から「育てる会」へ、市民と行政の協働の経緯と今後の活動について報告と意見交換

【定員】 30名(先着順受付)

【申込先】 yosmor21★gmail.com (★は半角記号の@にかえてください)

【問合先】 森下芳則 TEL:090-5107-1761

【主催】 東京の図書館をもっとよくする会

【動画】講演会「民主主義を支える図書館=アメリカのライブラリアンの闘い」(講師:豊田恭子氏)

2023年7月8日(土)に実施いたしました講演会の動画を公開します。下記をクリックしてご覧ください。

東京の図書館をもっとよくする会講演会 民主主義を支える図書館―アメリカのライブラリアンの闘い(講師:豊田恭子氏) – YouTube

当日のチラシ

講演会「民主主義を支える図書館=アメリカのライブラリアンの闘い」(講師:豊田恭子氏)のお知らせ

狭山市で司書解雇

埼玉県狭山市で22年間働きつづけてきた図書館司書(会計年度任用職員)が、2023年3月解雇されました。何が起きたのかが分かるリーフレット『図書館クビになりました』を、許可を得ましたので掲載します。

このリーフレットを見ると、このような異常なことが起きた要因は、非常勤職員の待遇改善を図るとして3年前に導入された会計年度任用職員制度の欠陥にあるものの、主要には狭山市の管理組織に欠陥があると思われます。それを修正すれば、この解雇問題の解決ばかりでなく、市の行政運営を向上させることになるでしょう。

 署名:司書の復職で図書館のさらなる充実を求める要望署名
 署名URL: https://chng.it/mX2RTQtmdd
 実施団体:狭山市図書館の充実と司書の雇用継続を求める会
 連絡先:toshoko10@gmail.com
 協力団体:公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)
 連絡先:hiseiki.koumu@gmail.com

23区と多摩市部の首長への図書館政策公開質問に2市から回答がありましたので発表します

概要

東京の図書館をもっとよくする会は、統一地方選にあわせて、図書館の公開質問を行い、第8次(最終発表)までの発表をしました。以降、池澤隆史(西東京市)、和地仁美(東大和市)2市からの回答がありましたので、発表します。

これにより回答者は、佐久ひろみ(板橋区)、斉藤猛(江戸川区)、セバタ勇(江戸川区)、小花高子(葛飾区教育長)、橋本やすこ(北区)、長谷部健(渋谷区)、岸本聡子(杉並区)、さねとう政子(墨田区)、樋口高顕(千代田区)、神沢かずたか(豊島区)、成澤廣修(文京区)、やまぎし啓子(稲城市)、永見理夫(国立市)、小林洋子(小平市)、池澤隆史(西東京市)、橋本弘山(羽村市)、藤田まさみ(東村山市)、渡部尚(東村山市)、栁下進(東大和市)、和地仁美(東大和市)、岩田康男(三鷹市)、河村孝(三鷹市)、松下玲子(武蔵野市)山﨑泰大(武蔵村山市)の24人の方々となります。

*今回回答された2市以外の回答は第8次(最終発表)に掲載しています。

*公開質問状はこれまでの各発表の末尾に掲載しています。

Ⅰ 回答(第8次以降分)

《西東京市》
◇ 池澤隆史

1 指定管理者制度等の図書館の民間委託を続けることに賛成ですか。

   西東京市図書館は、指定管理者制裝寺の民間委託はしておりません。

2 非正規労働者(民間委託に働く職員及び会計年度任用職員)の同一労働同一賃金の原則に基づく抜本的改善に賛成ですか。

  会計年度任用職員の報酬等の労働条件の設定につきましては、最低賃金や常勤職員との権衡等を踏まえ実施しております。

3 図書館数を削減することに賛成ですか。

  現在、当市の図書館は、駅前に4館、 住宅地域に2館、図書サービスポイントが2か所あり、運営しております。

4 司書職の採用に賛成ですか。

  司書職につきましては、定員適正化計画に基づき、業務の必要性及び業務量に応じ、退職に対してはその都度、その職の必要性を勘案し、補充・不補充を検討することとしております。

5 学校図書館法に基づく正規の学校司書の配置が必要だと考えますが、賛成ですか。

  国の第6次「学校図書館図整備等5か年計画」の目標を踏まえ、令和5年度から中学校区を基本に小学校2校と中学校1校に2名の字校司書配置を拡充し、学校司書を活用した小中連携の視点での読書活動の質的向上を図ります。

6 資料費の増額に賛成ですか

  当市の図書館では、毎年必要な貸料費を計上し、購入しております。

《東大和市》

※東大和市立中央図書館です。

◇ 和地仁美 

*「新市長より回答するよう指示がありましたので、以下の通り」中央図書館より回答

1 指定管理者制度等の図書館の民間委託を続けることに賛成ですか。

 東大和市においては、市内3図書館のうち中央図書館以外の地区図書館2館について、令和4年度から指定管理者による運営を行っております。直営による運営が望ましいという意見があることも承知しておりますが、開館日・開館時間を増やしさらに多くの市民に図書館を利用していただくため、検討を重ねた結果、人員体制等の点から指定管理者制度を導入したものであります。なお、指定管理者制度導入後も中央図書館は直営とし、地区図書館分を含めた選書やレファレンスへの対応については市が責任を持って対応しているところであります。

2 非正規労働者(民間委託に働く職員及び会計年度任用職員)の同一労働同一賃金の原則に基づく抜本的改善に賛成ですか。

会計年度任用職員の報酬につきましては、引き続き、最低賃金等の動向に注視するとともに、近隣市との均衡も踏まえながら、必要に応じて見直しを図ってまいります。 

3 図書館数を削減することに賛成ですか。

 東大和市立図書館は、全国でも有数の図書館利用実績があります。市民意識調査においても、市の公共施設のうち最も利用されている施設であるとの結果が出ております。市の魅力を高めるために図書館の充実は欠かせないと考えることから、削減の予定はございません。

4 司書職の採用に賛成ですか。

  市では、司書職の正規職員の専門試験は行っておりませんが、定期の人事異動の中で、有資格者の適正配置に努めているところであります。また、育成につきましては、職場内研修はもとより、専門研修の活用など通じて、引き続き、職員の資質や業務遂行能力の向上に努めてまいります。

5 学校図書館法に基づく正規の学校司書の配置が必要だと考えますが、賛成ですか。

  学校図書館法において、学校には学校図書館の専門的職務を掌らせるため、司書教諭を置かなければならないと定められていることから、市内全校に司書教諭を置いております。さらに、本市では、会計年度任用職員の立場である「学校司書」をさらに全校に1名ずつ配置しております。

6 資料費の増額に賛成ですか

  東大和市における図書館資料費は、市民一人当たり387.0円となっております(令和3年度実績)。厳しい財政状況にあって、電子書籍を導入していないなど十分とはいえないまでも、一定程度の資料費の継続した確保に努めているところであります。

担当課
1・3・6:中央図書館  2・4:職員課  5:教育指導課